《全体構想》 第1章 都市概況
3.現況と課題
(1)土地利用計画の現況と課題
@ 地域の特性を活かした土地利用計画の策定
 商業・業務の中心として位置づけられる小山地域、歴史資源に彩られた足柄地域、田園風景の拡がる北郷地域、富士登山の玄関口である須走地域の各地域はそれぞれ個性あふれる特色を持っており、こうした特性を活かした土地利用計画を策定していくことが求められています。
A 中心市街地の基盤整備の促進
 小山地域の中心市街地は旧態からの施設更新が遅れた(狭隘で線形の悪い道路、狭小な建物敷地規模、駐車施設のない商業店舗)ことで車型社会に対応できず、他都市や郊外部に立地する大規模店舗などに消費者が流出し、町の発展を阻害する要因の一つともなっています。面的な整備(土地形状の整形等)、線的な整備(道路構造の改良等)、点的な整備(駐車場の設置等)など基盤整備を促進して、町の中心地にふさわしいまちづくりを図っていく必要があります。
B 大規模プロジェクト・大規模開発構想に留意した土地利用
 本町には、第二東名自動車道の整備、湯船原地区の開発構想、富士紡績工場跡地の有効活用等の大規模プロジェクト、大規模開発構想があります。こうしたプロジェクト、構想の実現は、人や物資の流動や産業構造に変革をもたらし、都市の将来像を大きく変えることになることから、都市の将来像の実現に向けた土地利用計画を策定していく必要があります。
C 市街地を取り巻く自然への配慮
 本町の市街地を取り巻く自然は、大きく「富士山頂から山麓部にかけての自然」、「三国山系から丹沢山地、箱根外輪山から足柄山嶺にかけての山地斜面の自然」、「山麓下部緩斜面の自然」、「河川沿岸部の自然」に分けられます。これらの自然は、やすらぎと潤いを町民に与え、また工場や各種研修施設、リゾート・レクリエーション施設の立地に有利な条件を提供していることから、開発に際しても、こうした自然に対する最大限の配慮をする必要があります。
D 魅力ある商業地の形成
 JR御殿場線の駿河小山駅前、小山地域の(県)沼津小山線沿い、北郷・須走地域の市街化区域の中央部には路線型の近隣商業地域が分布していますが、現在では、商品種類の少なさや駐車場が整備されていないことなどにより、郊外型店舗への消費者の流出が目立つようになっており、魅力ある商業地の形成が求められています。
E 構造変化に対応した産業の維持、振興
 富士紡績とともに発展してきた産業は、時代とともに構造変化をおこし、現在は富士小山工業団地などの工業団地が産業の中心になっています。一方時代の潮流を受けて、本町が持つ自然の恵みを活かした研究・研修を目的とする地区整備も進められています。このように時代によって変化していく産業構造を的確に見極め、将来の拠点を整備していく必要があります。
(2)都市施設計画の現況と課題
@ 広域的な道路網の整備
 首都圏や他圏域などとの広域的な交流がますます強まることが今後予想されることから、交流を担保する国道246号の4車線化、(都)御殿場須走線の整備推進等の広域的な道路網の整備に向けた取り組みを積極的に推進していく必要があります。
 また第二東名自動車道については、その建設促進を図るとともに、アクセス道路の早期整備や、開放型休憩施設の設置に向けた検討を引き続き図っていく必要があります。
A 町内の道路網の形成と機能強化
 起伏や河川など地形的な分断要素が数多く存在し、地域の孤立化につながりかねない本町においては、分散する市街地、拠点、主要施設間をネットワークする幹線道路、地区の生活道路となる町道等、町内をくまなく網羅する道路網の形成を図り、交通機能の向上を図ることが必要です。
 そのためには現在の町内の都市計画道路及びそれらと連絡する道路網の見直しについても検討を加える必要があります。
B 公共交通の強化・充実
 鉄道については、第3次小山町総合計画におけるアンケート調査等でも明らかなように、JR御殿場線の複線化や小田急小田原線との相互乗り入れによる輸送力の増強は町民の大きな願いになっており、その実現に向けて、今後とも引き続き関係機関への働きかけを行っていく必要があります。
 またバス交通については、利用者の利便性を良くするサービス水準の向上に向け、関係機関への働きかけを行っていく必要があります。
C 交通結節点の機能強化
 JR御殿場線の駿河小山駅と足柄駅は、鉄道とバス、自転車、徒歩など複数の交通手段の結節機能を果たす場として機能しています。また駅は同時に、来訪者にとってまちの玄関口として機能することから、交通結節機能やまちの玄関口としての機能を向上させるために、両駅周辺におけるターミナル機能の向上を図っていく必要があります。
D 道路整備による都市環境の向上
 道路はそれ自体が散策、語らいの場等のレクリエーションの場ともなることから、植樹帯を備えた歩道の確保、道路緑化、自転車道路の設置等が、都市景観、都市の快適性、都市のシンボル性からも重要な要因になります。こうした道路整備によって、沿道環境ひいては都市環境の向上を図ることが必要です。
E 計画的な公園整備と緑資源の保全・育成
 土地利用と整合のとれた公園緑地整備を計画的に実現していくためには、「緑のマスタープラン」で計画されている将来目標水準に基づき、段階的な整備を行っていくことが必要です。また、公園緑地として位置づけられた以外の自然環境についても最大限配慮して、その保全・育成を図っていくことが必要です。
F 公共空間や民有地などの緑化の推進
 公共空間や民有地の緑については、都市環境を向上させ安らぎと潤いを与えるものと認識し、積極的な緑化推進を図っていくことが必要です。
G 生活関連施設の整備
 本町の良好な自然環境を保全し、次世代に継承していくためには、市街地に隣接する河川の治水機能の向上と河川空間の整備を図るとともに、市街地整備に対応した下水道施設の整備を推進していく必要があります。
H 福祉・文化交流施設の整備
 小山、足柄、北郷、須走の各地域に地区の福祉・交流の拠点となる施設整備(既存施設の有効活用を含む)を図ることが今後の課題です。今後開発が予想される温泉施設や道の駅などの交流施設を含め、各福祉・文化交流施設のネットワーク化についての検討も必要です。
(3)都市環境計画の現況と課題
@ 都市防災対策
 火災、震災対策としては、避難路、避難路となる幹線道路、及び公園緑地等の都市施設の整備を推進し、防災機能を高めることが課題です。また延焼防止機能を担う幹線道路の整備、緊急車両の通行を果たす地区内道路の整備の推進も課題です。一方、最も被害が懸念される密集市街地においては、面的整備と合わせた建築物の不燃化促進等防災機能を高めることが課題です。
 治山、治水対策としては、宅地開発に合わせた河川改良や公共下水道の整備、急傾斜地崩壊危険区域に対する崩壊防止事業の促進、大規模開発に対する防災調整池の設置などの防災対策を計画的に推進していくことが課題です。
A 都市景観の向上
 自然景観の最大の特徴をなしている富士山及び三国山系から丹沢山地、及び箱根外輪山から足柄山嶺にかけての山並みは、市街地を大きく取り囲むように存在しており、市街地からの遠望景観として豊かな自然景観を提供しています。これらの自然景観については保全を図るとともに、土地利用計画、都市施設計画のなかに積極的に盛り込んでいくことが必要です。
 また、小山、足柄、北郷、須走のそれぞれの地域においては、地域の成り立ち、都市構造を如実に示す個性ある地域景観を活かし、地域別構想(土地利用計画、都市施設計画)のなかに積極的に盛り込んでいくことが必要です。