○小山町環境基本条例
平成25年3月27日
条例第6号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的な施策(第8条―第18条)
第3章 総合的推進のための施策(第19条―第24条)
附則
小山町は、静岡県の北東端に位置し、町域は北西に富士山、東南に箱根外輪山、北東に丹沢山系と標高1,000メートルを超える山々に囲まれ、このため、町域の標高の差は約3,500メートルに及んでいる。
町の面積の約7割は、緑豊かな森林が覆い、至るところから地下水が湧出し、高山から平地に見られる多種多様な動植物が生息するなど豊かな自然環境を有している。
特に湧水は豊富であり、清流を保ちながら集落を流れ、須川や佐野川、野沢川を経て、町の中心部を流れる鮎沢川に合流し、神奈川県の酒匂川に至る。この湧水は、町の貴重な地場産品であるワサビや水かけ菜の栽培など地域産業の発展に寄与するとともに、昔から人々の心に大きな潤いと安らぎをもたらしている。
こうした中、河川の一部では生活排水などによる汚れや放置された山林や農用地なども見られ、身近な自然環境の悪化、更には人類共通の課題である地球の温暖化などが懸念されている。
私たちは、先人が残した豊かな自然環境を守り育て、失われた環境を復元し創造するとともに、地球規模の環境問題にも積極的に立ち向い、将来世代の人々が安心で安全な生活を享受できるよう努めていく必要がある。
このため、町、町民、事業者、更には滞在者等の理解と協力の下、豊かな自然環境の保全及び創造に向けた取組を積極的に推進することとし、小山町環境基本条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、自然に恵まれた町の環境の保全及び創造について基本理念を定め、町、町民、事業者及び旅行者その他の滞在者の責務を明らかにすることにより、それぞれが自主的に環境への負荷の低減に努めるとともに、環境の保全及び創造に関する施策(以下「環境施策」という。)の基本となる事項を定め、これを総合的かつ計画的に推進して、町の豊かな自然環境を将来世代に引き継ぎ、もって現在及び未来の町民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(2) 地球環境の保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。
(4) 環境の保全及び創造 公害その他の人の健康又は生活環境に係る被害の防止、自然の恵みの保全等に止まらず、水や緑、そこに生息する動植物等の自然との共生及び調和を図り、活用することにより、環境にやさしく潤いと安らぎを感じる快適な生活空間を作り出すことをいう。
(5) 環境マネジメントシステム 法令等の基準を遵守することに止まらず、環境への負荷の一層の低減に向けて、自主的かつ積極的に環境の保全に関する方針、目標、計画等を定め、その実行状況を点検・評価して改善していく一連の手続をいう。
(6) 新エネルギー 太陽光や風力、水力など自然の力を活用し、環境への負荷が少なく、ほぼ永続的に得ることができるエネルギーで、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令(平成9年政令第208号)第1条に定められているものをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、町民が健全で豊かな環境の恵みを享受するとともに、良好で快適な環境が将来世代に継承されるよう適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、町、町民、事業者、滞在者等が公平な役割分担の下に、自主的かつ積極的に行われなければならない。
3 環境の保全及び創造は、水と緑に象徴される自然環境に恵まれた町の特性を踏まえつつ、湧水等の水資源の保全と森林の育成を重要施策とし、環境への負荷を可能な限り減らすことにより、人と自然とが共生できる循環型社会が構築されるよう行われなければならない。
4 地球環境の保全は、人類共通の課題であり、町民の健康で安全かつ快適な生活を将来にわたって確保する上で極めて重要であるため、全ての事業活動及び日常生活において推進されなければならない。
(町の責務)
第4条 町は、基本理念に基づき、環境の保全及び創造について、自然的及び社会的条件に応じた総合的かつ計画的な施策を中長期的な視野に立ち策定し、これを公表して実施する責務を有する。
2 前項に定めるもののほか、町は、自ら環境への負荷の低減に率先して努めるとともに、町民及び事業者が実施する環境の保全及び創造に関する活動を支援する責務を有する。
(町民の責務)
第5条 町民は、基本理念に基づき、地域の自然的及び社会的条件に応じた環境の保全及び創造に自ら努めなければならない。
2 町民は、廃棄物の減量、資源の循環的利用、エネルギーの効率的利用等日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
3 町民は、地域の景観をより良くするために、家族ぐるみ、地域ぐるみで環境の保全及び創造に向けた取組に努めなければならない。
4 町民は、地域の環境の保全を促進するために、農産物の地産地消を推進し、フードマイレージ(食糧輸送に使うエネルギーをいう。)の軽減によるCO2削減に努めるものとする。
5 前各項に定めるもののほか、町民は、町の環境施策及び地域の環境活動に協力する責務を有する。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念に基づき、製造、販売、流通等の事業活動を行うに当たり、次に掲げる事項について必要な措置を講じなければならない。
(1) 事業に着手する段階で周辺環境へ配慮すること。
(2) 事業活動に伴って発生する廃棄物を適正に処理すること。
2 事業者は、製造、販売、流通等の事業活動を行うに当たり、次に掲げる事項について努めなければならない。
(1) 事業活動による製品等が使用、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減を図るとともに、エネルギーの効率的利用、廃棄物の循環的利用等を行うこと。
(2) 環境の保全及び創造に関する活動の情報を、町及び町民に適切に提供すること。
(3) 事業活動に伴う公害を防止するとともに、自然環境の保全のため、環境マネジメントシステムの導入を図ること。
(4) 農林業を営む事業者は、農地で使用する農薬及び肥料の適正な使用並びに山林の適正な管理について配慮すること。
3 前2項に定めるもののほか、事業者は、広く環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、町の環境施策及び地域の環境活動に協力しなければならない。
(滞在者等の責務)
第7条 旅行者その他の滞在者は、基本理念に基づき、滞在等に伴う環境への負荷の低減に努めるとともに、町の環境施策及び地域の環境活動に協力しなければならない。
2 旅行者その他の滞在者と関わりを持つ町民及び事業者は、前項に掲げることについて、周知に努めなければならない。
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的な施策
(環境基本計画)
第8条 町長は、環境施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画には、次に掲げる事項を定める。
(1) 環境の保全及び創造に関する総括的かつ長期的な施策の大綱
(2) 環境施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 町長は、環境基本計画を定めるに当たって、小山地域、足柄地域、北郷地域、須走地域の環境の特性を踏まえ、町民等の意見を反映するよう必要な措置を講じるとともに、小山町環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 町長は、環境基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
6 町長は、環境基本計画に係る施策の推進状況については、環境マネジメントシステムにより進捗管理を実施し、小山町環境審議会の意見を聴いて、町民に報告しなければならない。
(事業の配慮)
第9条 町は、事業の実施について、環境基本計画との整合を図るとともに、環境の保全及び創造について配慮しなければならない。
2 町は、事業者が行う事業について、環境に影響を及ぼすと認められるときは、環境の保全及び創造について配慮するよう、事業者に対し指導等必要な措置を講じるものとする。
(良好な環境の確保)
第10条 町は、環境の保全上の支障を防止するために必要があると認めるときは、関係行政機関と協議の上、指導等必要な措置を講じるものとする。
2 町は、必要があると認めるときは、事業者が行う環境の保全に関する活動について、事業者との間に環境の保全に関する協定を締結するものとする。
3 町は、協定を締結したときは、速やかに、これを公表するものとする。
(環境の保全活動の促進)
第11条 町は、町民等が自ら積極的に環境への負荷の低減に取り組むよう誘導するため、必要かつ適切な措置を講じるものとする。
2 町長は、町民等が広く環境の保全に関心と理解を深めるとともに、積極的に活動を行う意欲を高めるため、毎月5日を環境保全の日と定め、必要な事業の実施に努めるものとする。
3 町長は、各種団体、地域、町民等の環境の保全活動の状況を把握するため、環境会議を設置するものとする。
(公共的施設の整備等の推進)
第12条 町は、公共的施設の整備について、環境への負荷を低減するよう、必要な措置を講じるものとする。
2 町は、前項の措置の内容について、必要に応じて明らかにするものとする。
(環境への負荷の低減の促進)
第13条 町は、環境への負荷の少ない社会の構築に向け、町民及び事業者による廃棄物の減量、資源の循環的利用、エネルギーの効率的利用等が促進されるよう必要な措置を講じるものとする。
(環境の調査等)
第14条 町は、環境の調査を定期的に実施し、町内の環境の状況について把握するものとする。
(年次報告書)
第15条 町長は、各年度における環境の状況、環境施策の推進状況を公表しなければならない。
(教育及び学習の振興)
第16条 町は、環境の保全及び創造について、学校、家庭、地域、職場等が一丸となって、広く理解と関心が深められるよう、環境教育及び環境学習の推進に努めるものとする。
2 町は、環境教育及び環境学習を推進するために、環境に係る知識の普及及び人材の育成に努めるものとする。
3 町は、環境の保全及び創造について、知識及び技術を有する人材又は団体による町民等に対する環境教育及び環境学習の場の確保に努めるものとする。
4 町は、町民及び各種団体の自主的かつ積極的な取組を推進するため、表彰制度を導入するものとする。
(町民等の自発的な活動の促進)
第17条 町は、町民等が行う資源再生に係る回収活動、環境美化活動、緑化活動その他の環境の保全及び創造に関する活動を促進するため、参加の仕組みづくりと機会の充実に努めるとともに、技術的な指導、助言その他必要な措置を講じるものとする。
(情報の収集及び提供)
第18条 町は、環境教育及び環境学習の推進並びに町民及び事業者が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動を促進するため、必要な情報の収集と提供に努めるものとする。
第3章 総合的推進のための施策
(自然環境等の保全及び創造)
第19条 町は、富士山を中心とした豊かな自然環境や歴史的文化的環境を将来にわたり継承及び活用していくため、次に掲げる事項について、必要な措置を講じるものとする。
(1) 富士山、丹沢山系、箱根外輪山のそれぞれの環境の保全及び創造に関すること。
(2) 森林、草原の保全及び創造に関すること。
(3) 水資源、水辺環境の保全及び創造に関すること。
(4) 農地等の保全及び創造に関すること。
(5) 野生生物及びその生態系の保全に関すること。
(6) 歴史的文化的環境の保全及び創造に関すること。
(7) 森林や湧水など自然環境を活用した新エネルギーの創造に関すること。
(美しい景観及び生活空間づくりの推進)
第20条 町は、地域資源を活かした美しい景観及び生活空間づくりを進めるために、必要な措置を講じるものとする。
2 町民等は、その所有又は管理する土地又は建物を清潔に保つよう努めなければならない。
(生活環境の保全)
第21条 町は、町民の健康の確保及び生活環境の保全のため、環境に係る監視及び測定体制の整備、公害の未然防止、事故時の対応等について必要な措置を講じるものとする。
(国等との協力)
第22条 町は、環境の保全及び創造を図るため、広域的な取組みを必要とする施策について、国及び他の地方公共団体と協力して推進するよう努めるものとする。
(地球環境の保全)
第23条 町は、国及び他の地方公共団体、町民、事業者、滞在者等と連携し、地球環境の保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
(環境審議会)
第24条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、環境の保全及び創造について、必要な事項を調査審議するため、小山町環境審議会(以下「環境審議会」という。)を置く。
2 環境審議会は、町長の諮問に応じて、次に掲げる事項について調査審議し、答申する。
(1) 環境基本計画に関する事項
(2) 環境施策を総合的かつ計画的に推進する上で必要な事項
(3) 環境の状況に関する事項
3 環境審議会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。
附 則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。
附 則(平成29年9月27日条例第21号)
この条例は、公布の日から施行する。